Starting Puppy


ボーダーコリーを子犬から飼いはじめる方へ・・・

愛すること

まず最初に思い描かなければならないのは、目の前にいる子犬が「子犬である」という事実です。
フワフワでコロコロしてて、短い足でちょこまか動いて愛らしくて・・・どっからどう見ても子供だよ、と思われるでしょう。 でも、頭の中も純粋で真っ白で、なーんにもわかっちゃいないってことにまで思い至る人は少ないと思います。

成犬が訓練を受けていると、カッコイイです。コマンドに従ってキビキビ動いてくれたらますます目がハートです。 だからといって同じことを子犬に、今、やらせることに意味があるとは思えません。

幼児には幼児期に通らなきゃならない道というものがあるのですね。物事には順番というものがあるのです。 そういう時期を「しつけ」とか、「訓練」とかいう大義名分で奪っちゃあいけません。

群を作る動物が生きていくための力の根源は、「自分が愛されている」という自信です。
そんな自信、どうやってつけさせるのかって?

難しく考えることはないんです。どんな親子も普通にやっていることです。 かわいいから抱きしめて、危ないものを排除し、困ったときは助けてやる・・・それだけなんだけど、違う種の生き物だから、普通にやれったって困っちゃいますね。

では、少し具体的に。

子犬は好き放題に生きています。危ないとか恐いとか、思うか思わないかはそれぞれです。人間から見て危ないと思われるもの、電気コードやら、階段やら、、、は彼らの自由に過ごせる場所の中に含めないようにしましょう。

安全なエリアの一角が、たぶん彼らの城になるはずです。座布団を敷くなり、出入り自由のケージを置くなり、彼らの場所を確保してやりましょう。誰にも邪魔されずに眠れる場所はとても大事です。そして、そこにいるときは、誰も手を出さないことを約束してやりましょう。

少しずつ成長してくると、行動半径が広がってきます。昨日まで昇れなかったところに上ったり、何かに顔を突っ込んで抜けなくなって泣いたり、ココから出ちゃダメよ、って言われたのに、そーっと出てみたり・・・。危険なときや、今後も一切許してはいけない行動をとったときはすぐに、穏やかで毅然とした「No」の言葉とともに制止しましょう。

成長とともに許してやるべき行動は、危ないなと思うまで、見て見ぬフリをしておきましょう。彼らの好奇心が満足すればきっと帰って来るでしょうし、不安になったり困ったりしたときは必ず振り返ります。そのときすかさず、
  「お帰り!楽しかった?」
  「それ以上は危ないから帰っておいで」
  「恐くないよ、だいじょうぶだよ」・・・
状況に応じて、気持ちをこめて声をかけてやりましょう。

見守られているという安心感と、答えをすぐに返してくれる信頼感が子犬たちの中に生まれてきます。これが、「自分は愛される存在」であることの自信に繋がっていくのです。

もちろん、1日や2日で培われるものでもなく、何をもって「おわり」というものでもありません。あなたのとった行動に「No」とは言ったけれど、あなたを愛することに条件はいらない・・・そういう気持ちをずっと犬たちに語りかけてやりたいものです。

「愛される」ってことはすごいことです。
人間は「愛される」という目に見えない自信があってこそ、他人や、自分をも愛せるようになるんだそうです。犬たちにも同じようなことが言えると思っています。愛されていると感じるからこそ、犬たちも人間の気持ちに同調してくれたり、飼い主に文句が言えたり するんですね、きっと。

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犬を犬として考えること

2番目に覚えておかなければならないこと、それは、彼らが犬だということです。
人間の赤ちゃんに指を差し出せば、彼らなりの強さで握ってきます。目につくものは口に入れてみたりします。それと同じように子犬はじゃれて噛みついてくるものです。やっぱり、目につくものは何でも口に入れてみたりします。人間ほど上手に手が使えないから、イヤなことがあると手で払いのける代わりに口を使っちゃいます。

だから、1ヶ月や2ヶ月の子犬が噛むんです!と慌てることはありません。そういうものなんです。この時期に攻撃性があるとも思えません。(だって、彼らの目線から人間を見てください。巨大で恐いのは人間の方です。)彼らなりに愛されていることを感じ取り、かまってもらおうと体当たりでやってきます。

だからこそ、この時期に大きな声で怒鳴りつけたり、叩いたり、噛まれた痛さにひるんだり、恐がったりすると、いろいろな間違いが生まれることも事実です。子犬たちの性格によっては大きな問題にならないこともあるかもしれませんが、後々に人間によって「問題行動」と名づけられる行動の原因になる可能性を持っているといえます。人間と暮らすルールをきちんと理解させる前に叱ることはないはずです。ましてや怒ることなど理不尽です。

例えば、2、3ヶ月の子犬が粗相をする、噛みつく、といったことに対し、人間が怒りをあらわにするとどうなるでしょう。
人間の1歳や2歳の子供と同じくらいだと想定してください。なんで怒られてるか、なんてわかっちゃいないですよね。自分が一番頼りにしている親が、なんでかわからないけど、自分に対して怒ってる。ボクは愛されてないんだ・・・と意識の中に植え付けてしまっても、不思議ではないのです。

また、怒鳴られたり、叩かれたりしたときには従順になればいい、と考えてしまうようになります。餌も寝床も与えてくれるし、遊んでくれることもあるから、人間は大好きなんだけど、自分が楽しいこと以外は人間が怒鳴るまでやらない犬になってしまいます。

こういう犬の一番恐いところは、「自分で考える」、というボーダーコリーを語る上で最も大事にされてきた判断力を閉ざしてしまうことにあります。

逆に犬を恐がると、また違った問題が起こります。
いつでも、気に入らないことがあると、牙を使ったり吠えたりして恐がらせれば、なんでも自分の思い通りになると思ってしまいます。これは、よく言われる「アルファ」でもなんでもなくて、ただ、好き勝手にしているだけです。自分の要求を通したいときに、恐がらせればいいと思っているだけなんです。その証拠に、要求のないときは従順な犬だったりします。

いずれにしても、人間の言葉を自ら理解しようとするまで、根気よく、してはいけないことや、間違ったことには「NO」、正しい行動を教えて「YES」と、伝えてやるべきです。ボーダーコリーは賢い犬です。何かを教えるのに、おもちゃやおやつはいりません。わかりやすい態度と言葉で十分に意思は伝わります。

しかし、最初は、何度言ってもわかるはずもなく(だって、赤ちゃんですから)、腹も立ってくるのですが、6ヶ月を過ぎるくらいまでは我慢してください。そのうちに、「YES」と「NO」の意味がわかってくると、「YES」と褒めてもらいたいので、一生懸命、人の話を聞くようになります。犬だって、「NO」と言われるのはいやなものです。

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叱るべき時

しかし、そんなに可愛いことを言ってるのもつかの間で、成長するにつれて、行動範囲を広げたり、好奇心から飼い主の言うことを無視したり・・・といろいろやってくれるようになります。

1歳前後の子犬は、身体も大きくなったし、いろんなことを覚えたし、自分では立派な犬になったと思っているでしょう。でも、思春期の中学生や高校生を想定しておいたほうがいいです。本人は大人のつもりでも、心はまだ中途半端なんですね。

このころに、責任のある仕事を与えてやるのがいいと思います。
「訓練」を考えるのもこれくらいの時期からで十分だと思います。人間の役に立ちたい、とか、ハンドラーの意図を汲もう、と考えてくれるようになるのもこのころからです。訓練に意欲を見せてくれたり、新しいことを覚えるのに張り切ったりします。その反面、仕事以外のときは、「別に言うこと聞かなくてもいいや」などと、勝手に判断するようにもなります。ちょっと自分のわがままが通るかどうか試してみたり、もうちょっと・・・という好奇心に勝てなかったりするのです。

こういう状態を、「うちの犬は問題犬です!!」と嘆く人がいますが、けっして、あなたが嫌いになったわけでもなく、 あなたに反旗を翻そうと思ってるわけでもありません。門限をちょっとずつ遅くしてもらおうと、親にチャレンジしてるんです。しかし、彼らは、ま、いいか・・・とずるずる言いなりになるような情けない親を期待しているわけでもありません。毅然として、ルールを再確認しましょう。

例えば「来い」というコマンド。これは確実に効いて欲しいコマンドです。
「来い」の意味を知っているにもかかわらず、いろいろ言い訳を考えて、戻ってこないとき、はじめて「叱ってもよい」と思います。叱るといっても、怒鳴り散らしたり、殴ったりするわけではありません。コマンドは繰り返さず、「聞こえてるわね!?」という意味を込めて、「指示に従いなさい!」という気持ちを込めて注意を促す声を出します。この声の中に人間の確固たる意思を読み取れば、犬は必ず従います。

逆に、今、コマンドを出しても意味ないな・・・という状態のときは、コマンドを出してはいけません。
どうせ守られないコマンドなら出さない方がいい、というのではなくて、コマンドは絶対じゃないんだ、と犬が判断してしまうからです。 また、そういう状態の時には人間側にも、たいした意味がなく、強い意志を示すのが難しいからです。

たしかに、コマンドに従わなかったら叱らなければならないと思いますが、叱る場面なんて、極力少ない方がお互いに気持ちいいし、あまり意味のないコマンドを出すのもつまらないことだと思います。なぜなら、人間に従わせることで、犬への優越感を持つことができるでしょうが、信頼関係を築いたパートナーにとって、そんな優越感は必要ないからです。

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怒ることと叱ること/干渉することと愛すること

「怒る」と「叱る」を使い分けて書いてきたつもりですが、なかなか伝えるのは難しいです。
前者は感情のままに犬にあたることで、怒鳴ったり叩いたり、無視したりといった、犬にとって、なぜ人間がそのような行動をとるのか理解できない場合で、犬にとっては理不尽に「怒られた」ことになります。こんな怒りが自分に向けられたとき、犬の中に自分を否定する感覚が生まれ、いわば「心が傷つく」ことになります。

反対に、人間が同じような行動をとっても、なぜ人間が憤っているのか、自分が何をしたのか、因果関係がわかっている場合には心が傷ついたりはしません。

もちろん、行き過ぎた暴力や、徹底した無視などはどちらもしつけとは程遠い虐待ですよね。

先にも書きましたが、ルールをきちんと教えずして、叱ることはできません。
人間の中では常識で通用しても、犬には丁寧に根気よく教えてやらなければ通用しないことはたくさんあります。きちんと教えたつもりでも、人間の意に沿わない行動をとる場合も叱るべきではありません。犬は犬として、理解に努めた結果なのだから、人間が伝え方を間違えたか、どこかで、「それでいいよ」、と教えてしまったか、と考えるほうが妥当です。

また、判断が難しいものに、過保護と、愛情をかけることの違いがあります。
これも簡単に説明の付かないものですが、あえて言葉にするならば、前者は相手のことを考えない愛で、後者は相手を尊重した愛であろうかと思います。

人間でも、欲しがる物を与えすぎたり、親が子供の気持ちを代弁しすぎたり、子離れできない親の子供の成長への弊害はよく言われることですが、犬でも同じように考えていいのではないかと思います。もちろん、親離れして独立していくわけではないですから、確かに違いはあるのですが、気持ちの上では、子犬、青年期、成犬を意識しておきたいものです。

しかし、過干渉については、どんな時期にも害にこそなれ、良いことはなさそうです。程度問題なので、一概には言えないですが、うっとーしい飼い主だなぁ・・・と思われるのはあまり得策ではないと思います。

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ボクがボクらしく生きること

動物を観察、研究し、分析して生まれた行動学は、それなりに学問として意味はあるかと思います。そこから編み出されたしつけマニュアル、訓練手法には、なるほど、と思わせられることもしばしばです。しかし、こういうものは大きな見地から見たもので、ある状況ではこの種類の動物はだいたい同じような反応をする、とか、この月齢ではこの程度の成長をするなどといった大まかな傾向を示しているだけです。

この先どんなことが起きるか(例えば、歯が抜け替わるだいたいの時期とか、足を上げてオシッコするだいたいの時期とか・・・)少し頭に入れておくと、心に余裕ができます。もちろん、疾患に対する知識も持っておけば、ちょっとおかしいかな?というときにうろたえなくてすみます。獣医さんとの会話もスムーズに進むかもしれません。そういう意味で知識を仕入れておくことには大賛成です。

しかし、人間の子育てマニュアルだって、うちの子は違うわ!!なんてことはいくらでもあります。マニュアルにとらわれすぎたばかりに、この子の個性を潰してしまったり、見逃してしまっては何にもなりません。

今、私たちが育てたいのは目の前にいる「我が子」です。
ひとつのマニュアルで、この世のすべての犬を同じ犬に仕上げることができるかのようなHowTo本に頼る必要はありません。先人のノウハウやプロの指導を受けるのは、仕事やゲーム(競技など)を教えるときだけでよいと思っています。

一番大事なのは彼らと心を通わすことであり、彼らの持って生まれた良さを引き出してやることです。
ボーダーコリーは人間の目をしっかり見つめてくれる犬です。
彼らの目がずっと無邪気なままでいられるように、彼らがそれぞれの個性を生かして楽しく生きていけるように、祈っています。

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